ドクターヘリはアメリカとドイツを中心に1970年前後より発達した、ヘリコプターを用いた救急システムを我が国が取入れたものです。ちなみに「ドクターヘリ」は和製英語で、欧米ではAir ambulance、ドイツ語ではRescue Helicopter と言います。名前以外にも「ドクターヘリ」には医師と看護師が搭乗しますが、「Air ambulance」には看護師と救命士、「Rescue Helicopter」には医師と救命士がそれぞれ乗り込むなどの違いがあります。
ドイツではアウトバーンでの交通事故対策として当初ヘリコプター救急医療が導入され、30年間で交通事故死亡者を1/3に減少させることに成功しました。また1998年にドイツで高速列車事故が起こり、ヘリコプター救急医療が実績をあげます。死者110人、負傷者200人を超す大事故でしたが、ヘリコプター39機、車両345台、医師85人が現場に投入され、重傷者の8割が2時間以内に医療施設に搬送されました。最終的に87人が23カ所の病院に分散搬送され、その内31%でヘリコプターが使用されました。
その3年前の平成7年(1995年)1月17日。我が国では阪神淡路大震災が起こりました。死者6千人強、負傷者4万人強の大災害でした。この中で多くの「防ぎ得た外傷死」が発生したとされ、これを契機に我が国災害医療は一大転換点を迎えます。当時すでに我が国には多数のヘリコプターが配備されておりましたが、救急医療に用いられたのは震災当日にわずか1件。3日間に17人がヘリコプターで救急搬送されたにすぎませんでした。
この反省に立ち、我が国のヘリコプター救急医療が推進されることになります。
平成11年(1999年)当時の厚生省による「ドクターヘリ試行的事業」が開始され、岡山県川崎医科大学附属病院高度救命救急センター、神奈川県東海大学医学部附属病院救急センターでドクターヘリが試験的に運用開始となります。この結果救急医療における死亡、障害の減少が期待される結果となりドクターヘリの導入は全国各地で行われるようになり現在に至ります。
日本航空医療医学会ではドクターヘリの要件を定めており、概ね以下の通りです。
ここでは、従来救急「搬送」に用いられてきた消防防災ヘリコプターとの違いが明確にされています。すなわちドクターヘリでは「現場で救急医療を開始すること」が重視されるということです。
ドクターヘリの導入とは、いままでの救急医療システムに新しい道具としてのヘリコプターが追加されるということではありません。医療が現場から開始されるということであり、そのために救急隊の業務は従来の「搬送」から、「現場治療」に拡大されるということです。
有効なドクターヘリ活動のためには、仕組みが新しく変更された(paradigm change)のだという共通認識が必要だと思われます。
使用機体:EC135P2+
ユーロコプター EC 135 (Eurocopter EC 135) はユーロコプター社(欧州航空宇宙防衛会社EADSの子会社)が生産する双発の汎用ヘリコプターです。
高い安全性、最新技術を結集した高性能、環境に配慮した低騒音・低振動設計、使いやすいキャビン、高い稼働率と高い整備性による優れたコストパフォーマンス等の特長により報道、救急医療、警察、社用・旅客用、操縦訓練用等の各種用途で使用されています。
搭乗員 Crew | 機長 pilot×1 |
---|---|
乗員 Capacity | 最大7人 up to seven passengers 【ドクターヘリ仕様の場合】 運航要員2名(機長、整備)、医療要員2名(医師、看護師) 、 患者1名、付添1名の最大計6名 |
長さ | 12.16m(39 ft 11 in) |
高さ | 3.51m(11 ft 6 in) |
空虚重量 | 1,455kg(3,208 lb) |
最大離陸重量 | 2,910kg(6,415 lb) |
エンジン | 2×Pratt & Whitney Canada PW206B turboshaft engines rated at 498 kW(668 hp) |
Main rotor diameter | 10.2m(33 ft 6 in) |
Main rotor area | 81.7m2(879 sq ft) |
巡航速度 | 254km/h(158 mph; 137 kn) |
---|---|
超過禁止速度 | 287km/h(178 mph; 155 kn) |
航続距離 | 635km(395 mi; 343 nmi) |
最大上昇高度 | 6,096m(20,000 ft) |
上昇率 | 7.62m/s(1,500 ft/min) |