信州ドクターヘリ松本は平成23年10月1日に運航を開始し、令和3年10月1日で丸10年となります。
松本機は年間450件程度の出動があり、令和3年3月31日現在の要請件数は5739件、出動件数は4449件となっております。また、佐久機・松本機の2機態勢となったことで重複要請や天候不良などにより出動できなかった事案(年間100件前後)が大幅に減少いたしました。
平成25年9月より新生児施設間搬送(信大病院NICU医師同乗)
平成26年2月より重症小児転院搬送(県立こども病院医師同乗)
県立こども病院、当院NICUと協力し開始いたしました。
【新生児施設間搬送】
重篤な新生児疾患へ対応できる施設が限られているため、保育器含め特別な資機材をドクターヘリ(松本機のみ対応)に搭載、また、救急医のみでの対応は困難なことから当院NICU医師が同乗し施設間搬送を行います。すでに長野県立こども病院ドクターカーにより連絡搬送体制は整っているため、迅速な対応を考慮した出動となります。
【重症小児転院搬送】
信州ドクターヘリ松本が、県立こども病院に来た施設間搬送依頼に対応し、県立こども病院医師をピックアップして搬送元病院へ飛行。安定化後、状態により、ドクターヘリもしくは同時出動するこども病院ドクターカーで患児を搬送する
実績(平成27年9月~令和3年3月)
新生児搬送:20件
重症小児転院搬送:16件
平成26年9月27日 御岳山噴火
令和元年10月12日 台風19号災害
DMAT隊員の派遣、患者の施設間搬送などに対応しました。
全国のキャラクターが人気を競う「ゆるキャラグランプリ(GP)2019」で、ご当地部門でグランプリに輝いた『アルクマ』と信州ドクターヘリ松本がコラボし、非売品のステッカーとピンバッチを製作しました。また、出動時にフライトスタッフからお渡ししている医療費についての説明にもコラボアルクマを使用させていただいております。
信州ドクターヘリは長野県の公共的な医療施策として運航しております。今後ともご理解ご協力をお願いいたします。
信州ドクターヘリは長野県内の消防本部からの要請で出動します。
※県民の皆様が直接ドクターヘリを要請することは出来ません。
【ランデブー方式の場合】
ランデブー方式とは、あらかじめ決められたヘリの着陸地点(ランデブーポイント)でドクターヘリと救急車で搬送された患者が接触する方式です。
消防本部と基地病院CSとでランデブーポイントを選定、時間調整します。
ドクターヘリはランデブーポイントに直行します。
患者は現場から救急車でランデブーポイントに搬送します。
ランデブーポイントでフライトスタッフは患者と接触、治療開始、搬送します。
【ランデブーGO方式の場合】
ランデブーポイントと救急現場が離れている、救助に時間がかかる、救急車が現場まで行くのに時間がかかるなどの場合、ランデブーポイントから支援車でフライトドクター・ナースが現場に向かうことがあります。
【現場直近の場合】
あらかじめ決められたランデブーポイントではなく、安全が確保された現場近くに支援隊の誘導で着陸することがあります。患者の直近に着陸できるのでいち早く医療開始できます。
信州ドクターヘリの運航時間は原則的に午前8時30分から午後5時までです。
ただし日没が午後5時前の場合は日没時間までが運航時間です。
長野県は信州ドクターヘリ松本・佐久と2機体制でドクターヘリ運用しています。効率の良い運航のため県内を2つに分けて活動しています。もちろん、それぞれの活動状況に応じて相互補完しています。
名称 | 活動エリア | 基地病院 |
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信州ドクターヘリ松本 | 中南信 | 信州大学医学部附属病院 |
信州ドクターヘリ佐久 | 東北信 | 佐久医療センター |
信州大学医学部附属病院屋上ヘリポートからのフライト時間。およそ30分で県内全域をカバーできます。
1:外傷・外因性疾患
2:呼吸・循環障害
3:脳神経疾患
4:心停止
5:その他
1:生理学的評価(外傷を含む全ての疾患を対象とする)
2:外傷
a.解剖学的評価
b.受傷機転評価(高エネルギー外傷の可能性を評価)
3:内科疾患
4:心停止
5:その他
1:要請
2:出動
3:傷病者の病院搬送
ドクターヘリでは、限られた医療資材で現場救急処置を行うため、臨機応変な対応が求められます。そのためフライトドクター・ナースは、どのような外傷・疾患に対しても対応可能な救急専門医・救急科ナースがあたります。
具体的な条件は各基地病院で基準を決めています。
信州ドクターヘリ松本では以下の基準を決めています。(条件は今後検討を加えていきます)
【OJT開始基準の確認】
【フライトドクター選定基準の確認】
【準備】
【搭乗日のながれ】
準備物品:
災害備蓄保管庫 フライトスーツ、安全靴、ワッペン(背中用と医師)
*使用後はフライトスーツは物品庫の洗濯籠、ワッペンと靴は元の場所へ
Cs前 OJT用携帯電話 OJT用PHS
個人装備 金銭(県境の駅等から帰院できる相当額) 病院職員IDカード その他防寒着、酔い止め等必要と思われるもの
§出動時§
当日のフライトドクターに課題をもらうこと
帰院後、出動記録(Cs室のファイルメーカー)作成
*信大搬送の場合にはカルテに申し送るべき事項を記載することが望ましい
自己評価表の作成
【月間予定】
【OJT期間のながれとフライトドクター認定について】
*無線免許についてはフライトドクター認定条件に明記されていないが、無線講習を受ける必要があり、受けていない者は無線通信を行うことができない。機内通信で整備等に中継してもらう必要がある。
年間数回講習会開催されているので直近で受講する必要がある
【その他】
フライトナースの選考基準は、日本航空医療学会のフライトナース委員会において以下の3点が定められています。
しかし、フライトナースの人選は各基地病院に委ねられているため、当院ではこの選考基準や他院のものを参考にし、以下のようにフライトナースの選考基準を定めています。
【当院における選考基準】
以上を考慮し、高度救命救急センターの師長、副師長が承認した者
朝 | 出勤後にフライトスーツに着替えます。 | |
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8:15 | ヘリポート前室にて出動準備開始 出動時に持参するバックの内容を医師、看護師が一緒にチェックします。 バッグは4種類、ドクターバッグ(赤)・ナースバッグ(オレンジ)・外傷バッグ(青)・小児バッグ(緑)です。 |
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8:30頃 | ヘリは松本空港の格納庫から信大ヘリポートに到着。 その後ヘリ内の機材も入念にチェックします。(無線機・モニター・人工呼吸器・その他物品) 点検終了後にパイロット、整備士、CS、フライトドクター、フライトナースで朝の安全ブリーフィングを行います(気象は・・・、航空情報は・・・、搭載燃料は・・・など)。 これらのチェックが毎朝9時までに行われています。 |
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要請待機中は、高度救命救急センター内で待機、出動コールでCS室に駆け込みます。 ※写真は、救急車対応中、カンファレンス中のフライトスタッフです。 要請があれば、CS室で情報を得て、エレベーターでヘリポートまであがり、ヘリに乗り込みます(要請から離陸まで約3分です) |
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15:30 | CS室で、当日の活動についてデブリーフィングを行います。 当日の反省や良かった点などをスタッフ間で共有、次回の活動に繋げます。 デブリーフィング後も引き続き出動待機です。 ヘリは日没に合わせて松本空港に帰ります(ヘリの帰投時間に合わせて、物品の積み卸しを行います)。 その後、活動記録を記入・ブログ作成などの事務作業を行い、業務終了となります。 |
ドクターヘリの機内には、救急治療に必要な医療機器や薬品等が搭載されています。
ドクターバッグ | 聴診器など診察道具他、気道管理ができるよう必要物品が収納されている。外傷の初期診療における迅速簡易超音波検査法ができるよう小型の超音波診断装置(エコー)も収納されている。 | |
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ナースバッグ | 強心薬、降圧薬、抗不整脈薬など治療に必要な薬剤他、麻酔薬、鎮痛薬、鎮静薬などの管理の必要な薬品類も収納している。 また静脈血管確保(点滴)ができるよう、注射針等の必要物品が収納されている。 |
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酸素 | ドクターヘリには2つ酸素ボンベ(大・小)が搭載されている。1つはドクターシート後ろにヘリ内に固定されている大きな酸素ボンベ。1つはストレッチャー横に着いている携帯用の小さい酸素ボンベ。 | |
患者監視モニター | 心電図、血圧計、酸素飽和度、呼吸数などを測定、連続して表示できるモニター。小型で耐震性であり、ヘリの外でも使用できる。 | |
除細動器 | 不整脈の傷病者に電気ショックをかけることができる機器。小型で耐震性であり、ヘリの外でも使用できる。 | |
シリンジポンプ | 微量かつ持続的に薬剤を投与できる機器。 | |
人工呼吸器 | 人工呼吸を自動的に行うための機器。 | |
吸引器 | 電気によって陰圧になったチューブで、人体の中の分泌物や血液などを吸引する機器。 | |
ストレッチャー | 傷病者はこれに寝てもらい、搬送する。 | |
オートパルス | 心肺停止状態の患者さんに対して自動で心臓マッサージを行ってくれる機器です。 患者さんにこの機器の上に仰向けで寝てもらい、白いバンドを胸に装着することにより胸骨圧迫をしてくれます。 心肺停止時には質が高く絶え間ない胸骨圧迫が重要となりますので、狭いドクターヘリの機内でも絶え間なく胸骨圧迫を施すことが可能となります。 |
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ロールインマウント | 新生児搬送の際に使用します。 保育器やシリンジポンプ、酸素ボンベ、心電図モニター等を搭載しています。 新生児搬送の際には新生児科の医師が同乗し患児の管理を行います。 |