長野県は今年(平成23年)10月1日、2機目となるドクターヘリの運航が信州大学医学部附属病院を基地病院に開始されました。広い県土を持つ長野県では、県民の命を一刻も早く救うため複数機の運用が必要であり、昨年(平成22年)から検討委員会を設けて2機態勢についての検討を行ってきました。
ドクターヘリとは、人工呼吸器などの医療機器を備え、救急専門医と看護師を乗せ、直接救急患者の元に向かう専用のヘリコプターです。
ドクターヘリを用いる最大の利点は、救急患者のいる救急現場に医師・看護師を素早く送り届け、すぐさま救命処置を開始し、適切な医療機関への迅速な搬送が可能になること。救急患者への適切な治療がいち早く行われることにより、救命率の向上や後遺症軽減が見込まれます。
長野県におけるドクターヘリは、平成17年7月から佐久総合病院を基地病院として運航が開始され、年間約300件、現在(平成23年11月)まで1,900件を越える出動があります。
2機態勢となったことで、重複要請等により出動できなかった事案への対応や、地域によっては救急現場等への早期到着が可能となり、県民の安心・安全の確保に寄与することが期待されます。
全国知事会ホームページより抜粋
※信州ドクターヘリは長野県からの受託事業として運航しています。
【お問合せ】長野県健康福祉部医療推進課 TEL 026-235-7131
信州ドクターヘリは長野県内の消防本部からの要請で出動します。
※県民の皆様が直接ドクターヘリを要請することは出来ません。
【ランデブー方式の場合】
ランデブー方式とは、あらかじめ決められたヘリの着陸地点(ランデブーポイント)でドクターヘリと救急車で搬送された患者が接触する方式です。
消防本部と基地病院CSとでランデブーポイントを選定、時間調整します。
ドクターヘリはランデブーポイントに直行します。
患者は現場から救急車でランデブーポイントに搬送します。
ランデブーポイントでフライトスタッフは患者と接触、治療開始、搬送します。
【ランデブーGO方式の場合】
ランデブーポイントと救急現場が離れている、救助に時間がかかる、救急車が現場まで行くのに時間がかかるなどの場合、ランデブーポイントから支援車でフライトドクター・ナースが現場に向かうことがあります。
【現場直近の場合】
あらかじめ決められたランデブーポイントではなく、安全が確保された現場近くに支援隊の誘導で着陸することがあります。患者の直近に着陸できるのでいち早く医療開始できます。
信州ドクターヘリの運航時間は原則的に午前8時30分から午後5時までです。
ただし日没が午後5時前の場合は日没時間までが運航時間です。
長野県は信州ドクターヘリ松本・佐久と2機体制でドクターヘリ運用しています。効率の良い運航のため県内を2つに分けて活動しています。もちろん、それぞれの活動状況に応じて相互補完しています。
名称 | 活動エリア | 基地病院 |
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信州ドクターヘリ松本 | 中南信 | 信州大学医学部附属病院 |
信州ドクターヘリ佐久 | 東北信 | 佐久総合病院 |
信州大学医学部附属病院屋上ヘリポートからのフライト時間。およそ30分で県内全域をカバーできます。
1:外傷・外因性疾患
2:呼吸・循環障害
3:脳神経疾患
4:心停止
5:その他
1:生理学的評価(外傷を含む全ての疾患を対象とする)
2:外傷
a.解剖学的評価
b.受傷機転評価(高エネルギー外傷の可能性を評価)
3:内科疾患
4:心停止
5:その他
1:要請
2:出動
3:傷病者の病院搬送
ドクターヘリでは、限られた医療資材で現場救急処置を行うため、臨機応変な対応が求められます。そのためフライトドクター・ナースは、どのような外傷・疾患に対しても対応可能な救急専門医・救急科ナースがあたります。
具体的な条件は各基地病院で基準を決めています。
信州ドクターヘリ松本では以下の基準を決めています。(条件は今後検討を加えていきます)
【選定基準】
【OJT搭乗基準】
フライトナースの選考基準は、日本航空医療学会のフライトナース委員会において以下の3点が定められています。
しかし、フライトナースの人選は各基地病院に委ねられているため、当院ではこの選考基準や他院のものを参考にし、以下のようにフライトナースの選考基準を定めています。
【当院における選考基準】
以上を考慮し、高度救命救急センターの師長、副師長が承認した者
朝 | 出勤後にフライトスーツに着替えます。 | |
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8:15 | ヘリポート前室にて出動準備開始 出動時に持参するバックの内容を医師、看護師が一緒にチェックします。 バッグは4種類、ドクターバッグ(赤)・ナースバッグ(オレンジ)・外傷バッグ(青)・小児バッグ(緑)です。 |
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8:30頃 | ヘリは松本空港の格納庫から信大ヘリポートに到着。 その後ヘリ内の機材も入念にチェックします。(無線機・モニター・人工呼吸器・その他物品) 点検終了後にパイロット、整備士、CS、フライトドクター、フライトナースで朝の安全ブリーフィングを行います(気象は・・・、航空情報は・・・、搭載燃料は・・・など)。 これらのチェックが毎朝9時までに行われています。 |
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要請待機中は、高度救命救急センター内で待機、出動コールでCS室に駆け込みます。 ※写真は、救急車対応中、カンファレンス中のフライトスタッフです。 要請があれば、CS室で情報を得て、エレベーターでヘリポートまであがり、ヘリに乗り込みます(要請から離陸まで約3分です) |
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15:30 | CS室で、当日の活動についてデブリーフィングを行います。 当日の反省や良かった点などをスタッフ間で共有、次回の活動に繋げます。 デブリーフィング後も引き続き出動待機です。 ヘリは日没に合わせて松本空港に帰ります(ヘリの帰投時間に合わせて、物品の積み卸しを行います)。 その後、活動記録を記入・ブログ作成などの事務作業を行い、業務終了となります。 |
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ドクターヘリの機内には、救急治療に必要な医療機器や薬品等が搭載されています。
ドクターバッグ | 聴診器など診察道具他、気道管理ができるよう必要物品が収納されている。外傷の初期診療における迅速簡易超音波検査法ができるよう小型の超音波診断装置(エコー)も収納されている。 | ![]() ![]() |
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ナースバッグ | 強心薬、降圧薬、抗不整脈薬など治療に必要な薬剤他、麻酔薬、鎮痛薬、鎮静薬などの管理の必要な薬品類も収納している。 また静脈血管確保(点滴)ができるよう、注射針等の必要物品が収納されている。 |
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酸素 | ドクターヘリには2つ酸素ボンベ(大・小)が搭載されている。1つはドクターシート後ろにヘリ内に固定されている大きな酸素ボンベ。1つはストレッチャー横に着いている携帯用の小さい酸素ボンベ。 | |
患者監視モニター | 心電図、血圧計、酸素飽和度、呼吸数などを測定、連続して表示できるモニター。小型で耐震性であり、ヘリの外でも使用できる。 | |
除細動器 | 不整脈の傷病者に電気ショックをかけることができる機器。小型で耐震性であり、ヘリの外でも使用できる。 | ![]() |
シリンジポンプ | 微量かつ持続的に薬剤を投与できる機器。 | ![]() |
人工呼吸器 | 人工呼吸を自動的に行うための機器。 | |
吸引器 | 電気によって陰圧になったチューブで、人体の中の分泌物や血液などを吸引する機器。 | ![]() |
ストレッチャー | 傷病者はこれに寝てもらい、搬送する。 | ![]() |